シェムリアップ  アンコール・ワットに残る鎖国前夜の日本人墨書
シェムリアップ  アンコール・ワットに残る鎖国前夜の日本人墨書_b0061717_0265943.jpg
EOS60D / EF24mmF2.8 IS USM (Siem Reap, 2014.4)

アンコール王朝(9~15世紀)の遺構として知られるアンコール・ワットには、この地を南天竺の「祇園精舎」と認識した日本人による墨書が十数か所残されている。最も有名なものは森本右近太夫一房の手による墨書であり、寛永9 (1632 年)に同地を訪れたこと、両親の安寧を祈願したこと、仏像を奉納したこと等が壁面に直接したためられている。

往時のアンコール・ワットは現在とは異なり、石仏が多数安置され、また壁面にも色彩が施されていたという。壮麗な石造建築と伽藍を眼にした旅人たちが祇園精舎と信じたのも無理からぬことだろう。

墨書は後年何者かにより塗り潰されており、全てを読み取ることは難しい。風化も進んでおり、何らかの保存処理を施さない限り、遠からぬうちに完全に消え失せてしまうように思える。

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EOS60D / EF24mmF2.8 IS USM (Siem Reap, 2014.4)

この「日本・堺」の墨書は、前述の森本右近太夫一房によるもののほど近くに残っている。南方の珍奇な品を求めた旅路だったのか、純粋な物見遊山だったのか、今となっては知る由もないが「好奇心旺盛な人びとがそこにいた」ことだけは確かだろう。中には夫婦でこの地を訪れた痕跡もあるという。

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EOS60D / EF24mmF2.8 IS USM (Siem Reap, 2014.4)

朱印船による海外渡航が認められていた約30年間、東南アジア各地には日本人町が存在した。季節風による渡航に相当な危険が伴ったことは想像に難くないが、鎖国前夜とも呼ぶべきこの時代に海の向こうへ旅立った者は数万人に上るのである。

徳川幕府が海外への渡航を禁じる方針を固めたのは、森本右近太夫一房が帰国してほどなくのことだった。帰国の道を選ばず外地に残留した日本人の足跡は、1700年頃まで確認されている。

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by silkroad4263 | 2014-05-25 23:59 | Cambodia | Comments(0)
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