シンガポール  江戸時代の漂流民・音吉が眠る墓地
シンガポール  江戸時代の漂流民・音吉が眠る墓地_b0061717_22533368.jpg
X-T20 / XF35mmF2 R WR (Singapore, 2019.7)

シンガポール日本人墓地公園の納骨堂には、遭難・漂流の末、ついに日本へ帰ることなく生涯を終えた江戸時代の元漂流民・音吉の遺骨が眠っている。音吉の生涯については、春名徹氏の大宅賞受賞作「にっぽん音吉漂流記」に詳しい。

1819年、数え14歳にして炊(かしき。見習い水夫)となった音吉は、尾張から江戸へ向かう途中で暴風雨に遭遇。その後船は14ヶ月に渡り太平洋を彷徨い、13名の乗員のうち9名はここで命を落とす。音吉ほか2名は奇跡的に生き延び、北米大陸に到達した。

英国人に保護された彼らは、ロンドンを経てマカオへ向かい帰国を試みる。しかし異国船打払令により乗船が砲撃を受け、故国を目前にして帰国を断念する。世にいうモリソン号事件である。
その後音吉は上海で商人の道を歩み、英国に帰化。ジョン・マシュー・オトソンを名乗る。また、自身の後に続く日本人漂流民の祖国送還にも尽力している。さらには英国側通訳としてしばしば来日し、長崎奉行より帰国を勧められるも固辞したことが記録に残っている。
晩年はシンガポールへ移住し、明治維新の前年、49歳で世を去った。

2004年、音吉の墓がシンガポールで「発見」され、その遺骨は荼毘に付されたのち、ここシンガポール日本人墓地公園と故郷尾張に分骨された。息子に日本へ帰るよう遺言したという音吉の170年の時を超えた帰国であった。

音吉は異国で果てた多くの日本人漂流民とは異なり、しばしば帰国の機会に恵まれていた。特に前述の通訳としての来日時は、既に上海に生活の基盤が完成していたにせよ、いわばお上のお墨付きでの帰国が可能であった。
しかし音吉はその道を選ばなかった。漂流という厄災から己の運と努力と勇気で相応の地位を築いた音吉にとって、江戸末期の日本は遥か過去の国に思えたのかもしれない。春名徹氏の言葉を借りれば、音吉はまさに「世界を見てしまった男」だったのである。

にほんブログ村 スナップ写真
by silkroad4263 | 2019-07-25 23:59 | Singapore | Comments(0)
< blog-top ----- << シンガポール  日本人墓地公園... 【旅の報告】 南方駆け足行脚 >>



旅、アジア、写真、カメラについて。NikonZ5と地味な単焦点レンズを愛用中。
by スクンビット総研
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
以前の記事
2025年 03月
2023年 07月
2022年 04月
more...
検索
カテゴリ
Tokyo(都内全駅途中下車の旅)
Japan
Bangkok
Thailand
Taiwan
Vietnam
Laos
Cambodia
Malaysia
Singapore
Myanmar
Nepal
India
Sri Lanka
Korea
Turkey
USA
China
Pakistan
Mongolia
Russia
Poland
Hungary
Italy
France
Spain
Ireland
UK
Portugal
Morocco
ご案内
リニューアル挨拶
'06以降の帰朝報告
アジア旅のコラム
カメラ・レンズ小噺
メインサイト更新日記
過去ログ(非公開)
タグ
(18)
(12)
(10)
(10)
(9)
(9)
(9)
(9)
(7)
(5)
(4)
(4)
(3)
(3)
(3)
(2)
(2)
(2)
(2)
(2)
ご案内
Profile
History
twitter
Amazonブックレビュー
価格.comカメラレビュー
YouTube


風水がわかる本 (Esoterica Library)

わたくしスクンビット総研の写真がちょっとだけ掲載されています。


画像一覧
記事ランキング
最新のコメント
B.Godさん 滅茶苦..
by スクンビット総研 at 10:31
こんにちは。この記事の最..
by B.God at 07:22
Naozoさん ご無沙..
by スクンビット総研 at 13:11
大変ご無沙汰しています。..
by naozoom at 19:30
>ヒョウちゃん コメン..
by silkroad4263 at 10:33
ブログパーツ
  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
フォロー中のブログ
エキサイトブログ向上委員会
非天然色東京画
ゆっくりFrogライフ ...
...
壱+壱=
ノラ猫日記 仲良しグミータン
東京雑派  TOKYO ...
Visitors
Myanmar Eye
JAZZ名盤解体聴書
旅。 ときどき猫。
書道・アジア
だまされたっていいんだよ
上海小区照相館
Untitled Ph...
アジアの路地から
東京凸凹ラビリンス徘徊記...
Faith of the...
Mallard's Blink
あとりえ井戸吉
片付けたくなる部屋づくり
てきぱきまむ の写真館
カツオブシャッター
portrait & s...
羊の宇宙
s o r a m a ...
また、だまされたっていいんだよ
外部リンク
ブログジャンル